2004年12月26日
パーソナル・ディフニッション・オブ・サクセス
都内に部屋を見つけました。
一月の中旬に引っ越します。
六畳一間の安いアパートです。銭湯が徒歩一分の所にあります。
駅からは徒歩5分。上出来でしょう。
僕は、それほど贅沢な生活を望んでいる訳ではないのです。
必要だと思うものが最低限あれば、あとは我慢できます。
どこかで不自由を楽しんでいるのだから「我慢」ですらないのかもしれません。
エアコンがないほうが、冬寒くて、夏暑いということを感じられます。
風呂がなければ銭湯が楽しいでしょう。(見方を変えれば、すぐ横に大浴場を持っていると言える)
トイレはつっかけを履いてドアを出ればいい。
部屋の中にないと絶対ヤダなんて思わない。
こういう事には、まあまあ我慢できる方だと思います。
時折我慢していることさえ忘れます。
住む場所に限らず、あらゆる物について、別に必要でないものは必要ないのに、そこをどうやって買わせるか。そういう言葉が余りにも溢れています。ありとあらゆる媒体が、一日中休む事なく巧妙に、欠落感、渇望感を刺激し、思考停止状態を作り出しています。
そういう言葉の氾濫から一歩距離を置くという立ち位置。
完全に離れるのでもなく、かといって渦中で盲目にもならない。
そういう微妙な立ち位置でバランスをとることが、お金や物欲に対する誠実な態度なのだと思います。
そういえば思い出すのだけれど、「人生ゲーム」というボードゲームがありました。
ルーレットを回し、出た目だけ進み、就職や結婚など様々な人生の節目とお金の出入りがあり、最終的な勝ち負けは持っているお金の額で決定されていました。僕は当時大喜びで遊んでいたのですが、今思い出すと、なんとも言えない気持ちになります。風刺としては極めて良質で、えげつない。
思えば、雑誌も新聞もテレビも、メディアの大部分が人生ゲームというスゴロクを助長させる働きをしています。○○代で○○という肩書き、年収○○万円、○○駅に住み、○○を持っている。○○の次は○○をして、その次は○○。
そいういう他者と比べられる分かりやすい基準とレールがないと不安になるという性質を利用して、売り上げを伸ばすのでしょう。こういう言説は余りに毎日、余りに高密度で浴びせられているので、知らずに僕の中にも否応なく血肉化されているのだと思います。ぼくはやはりある部分で、他者と比べないという達観の困難さを感じるのです。
星野道夫さんの書いた文章の一節に「パーソナル・ディフニッション・オブ・サクセス」という言葉があります。
ビルと奥さんのナンシーほどシンプルな暮らしをしている老夫婦をぼくは知らない。(中略)わずか十五畳ほどの家の中を見渡しても、人間はこれだけ何も持たなくてもよいのだ、とビルの暮らしは語りかけてくる。言いかえれば、人生を生きていく身の軽さである。そう、誰かがパーソナル・ディフニッション・オブ・サクセスという言葉を使っていた。きわめて個人的な、社会の尺度からは最も離れたところにある人生の成否、その存在をビルはぼくたちにそっと教えてくれているのかもしれない。(『旅をする木』の中の「生まれもった川」より)
これは、人生スゴロクから離脱するということなのだと思います。星野さんはそのことを「自分の生まれもった川の流れの中で生きてゆくということ」と書いています。ビルは星野さんに「ただみんな、驚くほど早い年齢でその流れを捨て、岸にたどり着こうとしてしまう」と言っていました。
パーソナル・ディフニッション・オブ・サクセス
個人的に定義する成功。
この言葉の持つ意味をよく考えます。
そしてぼくはごく単純に、「別に“お金持ち”になりたい訳ではないのだ」と何度も思うのです。
それこそ、何度も、何度も、何度も思うのです。
そのようなところに成功の定義はないと確認し、(これが実はなかなか難しい)
現実的なお金の入手方法を検討します。
パーソナル・ディフニッション・オブ・サクセス、
いい言葉だなぁと思います。
自己満足や傲慢さといった否定的なニュアンスを感じさせません。
社会とのしなやかな、しかし屹然とした間合いを感じます。
引っ越した後、ぼくはどうにか自活していくでしょう。
そのことで、家族や友人にちょっとお願い。
ぼくへかける言葉は、「甘いゾ、もっと現実を見なさい!」という厳しい言葉と、
「大丈夫、きっと上手くいくよ」という言葉は1:10ぐらいにして欲しいと思うのです。
不安は、煽ると無限増殖し、精神を萎縮させてしまう。
しかし、まったく失敗の可能性を見据えないのは、単なる無謀というものだ。
これからどうなるのか、可能性は無限なのだけれど、その中にはしっかりと「失敗の可能性」も含まれていることを見据えつつ、本質的かつ具体的な事柄を探り、見て、撮り、考えて、書きたいです。がんばるぞっ。
投稿者 tsuyoshi : 2004年12月26日 21:30
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