2007年02月17日

『胎児の世界』

胎児の世界』三木成夫(中公新書)

茂木さんの『脳と仮想』の中に三木成夫さんのことが書いてあり、映画『もんしぇん』のパンフレットにあった文章の中にもこの本のことが言及されてたので読んだ。

なんかすごい本を読んじゃったという感想。
解剖学者というより、三木成夫という一人の思想家が書いた本だと思った。

生物の二大本能は「個体維持」と「種族保存」だということ。
それを僕たちヒトという種は普段、「食事と恋愛」、「食い気と色気」「グルメとポルノ」などと言ったりする。そういう日常的でポップな表現で蓋をしている事柄の奥に、「食」と「性」のどちらにも、正視すると発狂しかねないような深淵がぱっくりと口を開けている。
そういう根源的な場所へ、解剖学者が「比較形態学」という知見を携えて入って行った知的冒険の書だった。

胎児は母胎のなかでどんな夢をみているのか。
「食」と「性」が同時進行するヒトという種のなかにもなお残っている、その位相交替のリズムはどのようなものか。
植物と動物は、それぞれどのように宇宙と交流しているのか。

そういう、自然科学で扱う領域からはみ出してしまうようなことを、文学、民俗学へと領域を横断しながら考察している。
そしてそのような探求を、男という性の「代償行為」「遡行本能」だとあとがきで述べている。「遡行本能」という言葉を読み、沢登りのことを想ったりもした。

投稿者 tsuyoshi : 2007年02月17日 15:42

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