2010年08月06日

ブログ引っ越しのお知らせ

2004年12月からはじめたこのブログを閉じて、
新しいブログへ引っ越しします。

アドレスは
http://tsuyoshihongo.com/blog/
です。

また、まだ製作中ですが、ホームページも新しくしました。
http://tsuyoshihongo.com


よろしくお願いします。

投稿者 tsuyoshi : 16:28 | トラックバック

2010年07月18日

写真展示のお知らせ:「湖畔の原始感覚美術展」


友人の美術家杉原信幸さんに誘われ、長野県の木崎湖畔で開催される「湖畔の原始感覚美術展」に参加します。

今回はじめて、水源というテーマで撮っている写真を展示します。
東京の水源域と、展示する場所である木崎湖に流れ込む小川の水源を撮った写真を、
湖を見下ろす古民家「虹の家」の蔵に展示します。

この古民家の前には水源から一直線に流れ下ってきた小川があります。
水源というテーマでの展示のはじめの一歩を、このほとんど水源域のような場所で展示できることをとても嬉しく思います。
水のはじまりをめぐる旅の、そのはじまりに立ち会っていただけたらとても嬉しいです。

さらに、喜望峰から日本まで自転車で旅をした時の写真から、サハラ砂漠編を「ゆーぷる木崎湖」という温泉施設に、
2008年夏にロシアのアルタイ山脈へ行き撮って来た皆既日食の写真を、大町市街にある「古民家料亭わちがい」に展示します。
水源、日食、自転車旅と、いままで撮ってきた三つのテーマを展示することになります。

この展覧会は、杉原さんがゼロから一人で立ち上げた展覧会です。
杉原さんのビジョンに共鳴する、多く魅力的な人たちが参加しています。
8月13〜16日には様々なパフォーマンスやイベントが予定されており、15日には木崎湖花火大会もあります。
近くでこの展覧会が育っていくのを見ていたのですが、縁が縁を呼び、偶然が連鎖し、ゼロから一気に展覧会が育ち、今ある形になっていきました。人と人との関係から自然に花開くように開催される展覧会です。
都市部からはすこし遠い場所にありますが、どうぞ、お越し下さい。

私の滞在予定はいまのところ、
8月1〜2日、12〜16日、30〜31日です。
虹の家か西丸震哉記念館にいるとおもいます。
お会いできること、楽しみにしています。

展覧会のHPはこちら「湖畔の原始感覚美術展

展示する場所のHPはこちら
虹の家
ゆーぷる木崎湖
わちがい

以下、詳細です。


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「湖畔の原始感覚美術展」

期間 2010年8月1日(日)~8月31日(火)
会場 西丸震哉記念館、信濃講堂(信濃木崎夏期大学)、古民家Y邸、虹の家・蔵
    海ノ口キャンプ場、麻倉、海口庵、わちがい、ゆーぷる木崎湖、阿部神社
    木崎湖キャンプ場、岬の田んぼ、北ヤマト園、Yショップニシ

主催 原始感覚美術展実行委員会
アートディレクター 杉原信幸
共催 西丸震哉記念館
助成 財団法人朝日新聞文化財団
後援 大町市、大町市教育委員会、安曇野アートライン推進協議会、大町博物館連絡会 、abn長野朝日放送、朝日新聞長野総局、信濃毎日新聞社、中日新聞社、大糸タイムス社
協賛 ゆーぷる木崎湖
協力 虹の家、山本晃司、麻倉プロジェクト、大町映像文化財を残す会、わちがい創舎、海ノ口キャンプ場、木崎湖キャンプ場、心身障害者福祉作業所「時計台」、社会福祉法人いたるセンター、 Yショップニシ、インドカレー屋青空屋台のおうち 、グリナ―ズビレッジ、北ヤマト園、NPO地域づくり工房、高瀬木材株式会社

写真提供 山本晃司、舘友希江、手塚愛子


参加作家

西丸震哉 (食生態学者、探検家、エッセイスト、画家、音楽家、ゲスト参加)
杉原信幸 (美術家、西丸震哉記念館アートディレクター)
淺井裕介 (泥絵を制作するアーティスト、福岡アジア美術トリエンナーレ等展覧会多数に参加)
新田学   (陶芸作家、空土(からっと)として「水と土の芸術祭」に参加)
本郷毅史 (水源域を撮る写真家、アフリカの喜望峰から日本まで自転車で3年5ヶ月間旅する)
山形淑華 (詩人の吉増剛造に学ぶ。大野一雄フェスティバル2007、2008に参加)
黒田将行 (アーティスト、Art space元我堂を運営)
青島左門 (石彫、インスタレーション、アーティスト)
長井一馬 (彫金家、長野県工芸展長野県知事賞、北澤美術館賞受賞、大町在住)
麻倉プロジェクト・山上渡 (岡本太郎芸術賞特別賞受賞、大町に8Link studioを運営、アーティスト)
蓮沼昌宏 (東京芸術大学美術解剖学博士課程修了、アーティスト)+虹の家
平林昇   (陶芸家、安曇野在住) + 稲尾の農家
出町光識 (美術家・陶芸家、空土(からっと)として「水と土の芸術祭」に参加)
片山康夫 (写真家、津軽在住)

吉増剛造 (詩人、写真家、映像作家、紫綬褒章受章、毎日芸術賞受賞など、ゲスト参加)
雪雄子   (舞踏家、大駱駝艦の旗揚げに紅一点参加、三内丸山縄文大祭で踊る。ゲスト参加)
槙野文平 (白洲正子に認められ、正子椅子を作った大町在住の木工家、ゲスト参加) 
草間彌生 (コレクション参加)
鈴木寅二啓之 (美術家、大地の芸術祭越後妻有アートトリエンナーレ参加、ゲスト参加)
田口ランディ (小説家、縄文友の会会長、ゲスト参加)
田中基   (縄文研究家、多摩美術大学非常勤講師、ゲスト参加)
タテタカコ (歌手、飯田在住、ゲスト参加)
 
心身障害者福祉作業所「時計台」
社会福祉法人いたるセンター


イベント:

「湖畔の原始感覚美術展オープニング」
参加作家を囲んでの立食パーティーです。
日時 2010年8月1日(日)18:00~20:00
場所 西丸震哉記念館
参加費 1000円

舞踏ワークショップ
雪 雄子「身体に還る日」
日時 2010年8月12日(木)、13日(金)、14日(土)(2泊3日)
場所 信濃講堂(信濃木崎夏期大学)
講師 雪雄子(舞踏)
    杉原信幸(美術)、クズメジュンイチ(ホーメイ歌手、イギル奏者)
    <合宿夜話>田口ランディ(小説家)、田中基(縄文研究家)、山本晃司(合鴨農家)
参加費 詳細は西丸震哉記念館までお問い合わせください。
集合場所 8月12日(木)12:00 西丸震哉記念館
定員 20名(申込期限は8月3日まで)

原始感覚ワークショップ
杉原信幸「発掘原始感覚体験」
日時 2010年8月13日(金)14:00~
西丸震哉記念館隣接地にて縄文遺跡地の表土の発掘体験を行い
出土物を洗い、出土した石器で粘土板に文様を描くワークショップ。
(制作した粘土板は豊科近代美術館・文化体験プログラム企画展に展示されます。)
参加費 無料
場所 西丸震哉記念館
定員 20名


「縄文夜話」
(ナイトミュージアム)
蛇とカエルとお月様について
日時 2010年8月13日(金)19:00~21:00
場所 西丸震哉記念館
講師 田口ランディ(小説家、縄文友の会会長)、田中基(縄文研究家)
定員 20名
参加費 1500円(縄文食、酒付き)


「拈花瞬目(ねんげしゅんもく)」
雪 雄子 舞踏公演 + 吉増剛造 映像講座
日時 2010年8月14日(土)
第1部 舞踏公演 
開演 14:00 [ 開場 13:30]
第2部 映像講座
開始 15:00 [ 終了 16:30]
場所 信濃講堂(信濃木崎夏期大学)
出演 雪雄子(舞踏家)
講師 吉増剛造(詩人、写真家、映像作家) 
協力 大町映像文化財を残す会
定員 100名
料金 1000円(大北地区在住)、1500円(地区外在住)     
    中学生以下無料

「土中絵画開き」鈴木寅二啓之
西丸震哉記念館隣接地に埋めた土中絵画
「八百万讃歌」を掘り出し、西丸震哉記念館に展示する。
日時 2010年8月15日(日)10:00
場所 西丸震哉記念館隣接地
参加費 無料

「マツリ」
杉原信幸(踊り)、山形淑華(うた)、他
日時 2010年8月15日(日)13:30
場所 西丸震哉記念館隣接地
参加費 カンパ制

タテタカコライブ
(ナイトミュージアム)
原始感覚アートに囲まれて聴くライブ。
タイトルは(ハルキテク オッ タ アヨロ)
左手に宇宙というアイヌ語より。
日時 2010年8月15日(日)16:00~18:00(19:00より木崎湖花火大会あり)
場所 西丸震哉記念館
出演 タテタカコ(歌手)
定員 50名
料金 前売り指定席2000円、当日指定席2300円、野外席1000円


こけし制作ワークショップ
黒田將行
日時 2010年8月15日(日)15:00~、16日(月)10:00~
作家が彫ったこけしに一人一個自由に顔を描いて
お堂に奉納するワークショップ。
参加費 無料
場所 西丸震哉記念館


クロージングイベント
「おふるめこ」
日時 2010年8月31日(日)18:00~
出演 雪雄子(舞踏家)、山形淑華(詩)
参加費 投げ銭
場所 古民家Y邸
パフォーマンス終了後、会費500円の持ち寄りパーティーがあります。


関連イベント

森の散歩「原始感覚ウォーク」 in 森のくらしの郷
日時 8月16日(月)9:00~12:00
場所 千年の森
参加費 500円
詳細については 千年の森自然学校 まで

ベンガルの吟遊詩人 バウルの唄[ユネスコ無形文化財]
日時 8月27日(金)18:00~21:00
場所 阿部神社
料金 2000円
(荒天の開催については090-7208-3922まで)


※8月15日(日)は木崎湖花火大会があり、夕刻より交通規制があります。
※8月14日(土)、15日(日)のイベント中の宿泊を希望する方は早めにご予約ください。
宿泊アート体験、周辺民宿、旅館も混み合うので事前予約が必要です


・原始感覚について
 西丸震哉氏が命がけの秘境探検で培った野生の感覚。
それは本来誰もが赤子の頃には持っていた感覚であり、
生命が大地とともに生きていく為の叡智として備わっ
ているものです。その叡智を人々は利便的な生活に囲
まれていくうちに忘れてしまっている。本展覧会を通
して、様々な化学物質に囲まれて生きる現代人が、生
き残るための危機察知能力を高め、日常とよばれる生
活のなかに潜む、かけがえのない美しさに気づくこと。
今を生きる私たちが、自然とともに生きていく術を、
身をもって体験することのできる気づきとしての展覧
会です。

・縄文≠パプア・ニューギニア
 西丸震哉氏の主要な探検地パプア・ニューギニアの
高地人の生活は、縄文中期の生活に相当します。その
縄文中期、約5000年前の縄文遺跡が西丸震哉記念館
の隣接地で野外アート作品制作中に偶然発掘されまし
た。運命的な符合とともに、西丸震哉氏と縄文人を惹
きつけた木崎湖畔において原始感覚をキーワードに美
術展を開催します。

・縄文世界と原始感覚
 地中から掘り出された縄文土器片と石器群を水で洗
い、泥の中から現れる縄文の形に心躍らせながら、何
に使ったものだろう?と、空想にふけりながら何度も
握っていると、手にしっくりと収まる個所がありまし
た。私たち現代人にとってただの石ころのように見え
る石たちは実は、すべて無限に変化する道具であると
いう直感が生まれた時、縄文と呼ばれている世界の姿
がはっきりと息づき始めていました。

・湖が海になる土地
 木崎湖畔に暮らす米農家の方が厳しい冬を越え、湖
畔端の田んぼに水が張られると、そこはまるで海のよ
うになると言いました。海ノ口という地名にもあるよ
うに、古代人も湖を海と考えていたのでしょう。湖が
そのまま田園へとつづく木崎湖畔の景色は、稲作発祥
の原風景に近い懐かしさを感じさせる土地です。稲尾
の無人駅に降り立ち、目の前に広がる田園と湖、山並
みがつくりだす風景を眺めた時、どこか懐かしい気持
ちが湧きあがってくるのではないでしょうか。

・生活の「花」としての美術
 大地とともに農業を営む木崎湖畔の人々にとって、
美しい湖畔の風景は身近なものです。大地と向かい
合う厳しい生活と日々移ろいゆく湖畔の美しさに囲
まれた日常に、一輪の花を生けるようにして、新し
い文化の風が吹き、一刻の花が咲く。そのような、
文化の花を愉しみ、大切にすることが、真に豊かな
生活というものではないでしょうか。

・水の言語、大地の声
 圧倒的なアルプスの大自然に抱かれる大町。稲尾集落の懐かしさ
を感じさせる湖畔の田園風景。木崎湖畔の美しい水の地としての空
間が現代の原始感覚保持者たるアーティストにどのようなインスピ
レーションを与え、水の言語のような繊細な大地の震える声をどの
ような原始言語としての美術表現に昇華し、発信していくことがで
きるのか。その水の言語-大地の声は、この地に住む人、この地を
訪れる人に新たな文化の産声を呼び起こさせることでしょう。

投稿者 tsuyoshi : 19:14 | トラックバック

2008年12月08日

「Altai Eclipse」展示の様子

calcutta cafeでの二週間の写真の展示が無事終わりました。
ほんとうにたくさんの方に来ていただきました。
二週間で僕は20回ぐらいカフェに出向き、いろいろな方とお話しました。
こんなに短期間に、こんなに集中的にたくさんの方とお会いすることは、普段はありえないことなので、終わってしばらく経った今でも、なにかすこしぼーっとしてます。

来ていただいた方、ほんとうにありがとうございます。
来ていただいたのにお会いできなかった方、ごめんなさい。
都合がつかなくて来れなかった方、またの機会にお会いしましょう。

以下に展示の様子と、会場で配った紀行文(ブログに載せた紀行文を書き直したもの)を載せておきます。

AltaiEclipse_web.jpg


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アルタイ山脈 エクリプス紀行
本郷毅史

 皆既日食(Total Solar Eclipse)とは、太陽が月に完全に隠される現象のこと。そのとき空はにわかに暗くなり、太陽の周りに普段は見ることのできないコロナが現れる。

 夏の初めごろ、八月一日にロシアや中国で皆既日食が起こると聞いた。
 カナダの北部からはじまり、グリーンランドの北を通り、西シベリアを縦断し、モンゴルと中国の国境あたりをかすめ、西安の少し先で終わるとのことだった。八月一日の日食が起きる時刻にこの帯の上のどこかにいれば、皆既日食が見れるのだという。時間は条件のいい場所で二分前後。でも、そのとき雨や曇りだったら見れないし、晴れていてもその瞬間だけ雲に隠されたらコロナは見れない。僕はロシアのアルタイ山脈に、皆既日食を見に行くことにした。

        *

 成田から北京へ飛び、飛行機を乗り換えて西シベリアの中心都市ノボシビルスクへ飛ぶ。そこから寝台列車でビースクへ。ビースクからバスに乗り換えアルタイ共和国の中心都市ゴルノアルタイスクへ。ゴルノアルタイスクで食糧その他を買い込み、ミニバスに乗りアルタイ山脈の奥へと進み、チビットという小さな村でおりる。そしてそこからはトレッキングになる。目指すはアルタイ山脈の奥深くにある、シャブリンスキー湖。

 チビットから重い荷物を背負い歩き出す。山小屋などはないので食糧その他をすべて背負わなくてはならない。三日後の夕方に皆既日食が起こる予定なのだが、シャブリンスキー湖まではちょうど三日ほどかかりそうなので、あまり休んではいられない。
 村をぬけ、濁流が流れる広い谷を数キロさかのぼり、谷底にある壊れかけた橋をおそるおそる渡り、針葉樹林の森の中を峠を目指して登る。一日目は橋を渡って少し登ったところでテントを張る。夜、空を見上げると、天の川がくっきりと見える満天の星空だった。

 次の日も朝早く起きて歩き出す。樹林帯の上り坂を汗をかきながら登り、やがて樹々がなくなり草原になり、昼すぎに峠にたどり着く。峠は見渡す限り広大な草原になっていて、ゆるやかな風が通り抜けていた。なだらかな下り坂をずっと下り、やがていくつかの細い流れが合わさった川沿いを歩くようになる。休憩したときに靴と靴下を脱ぎ、疲れた足を川にひたすと、あまりに冷たくて、二三秒しか入れられない。高山植物の花がそこかしこに咲いていた。ときおり濃いピンク色の花を付けた高山植物の群落があり目を奪われる。やがてまた標高が少し下がり、樹林帯になる。二日目は朝から晩まで十二時間ほど行動し、樹林帯の中でテントを張る。緯度が高いため日が長く、夜の九時ごろまで明るいので、長い時間行動できるのがありがたい。

 三日目も朝早く出発する。この日の夕方が皆既日食が起こる日だった。歩き出して二三時間あたりでシャブリンスキー湖がある谷へと入っていく。広い谷で、いかにも氷河が後退してできたという地形をしている。谷底を流れるシャブラ川がときおり小さな湖になったり、蛇行して湿地帯になっていたりして、飽きることがない。やがて遠くに雪を抱いた山が見え始める。雪山は徐々に大きくなり、やがてすこし急な坂を登ると、目的地としていたシャブリンスキー湖が現れた。湖岸の道を歩き、適当な場所にテントを立てる。しかしまだ樹林帯の中で、谷の底でもあるので、対岸の尾根に太陽が隠されてしまう。地図を見るとさらに奥に湖があるので、不要な荷物をテントに置き、撮影機材だけの軽装でさらに上を目指す。

 シャブリンスキー湖をぬけると樹林帯は終わり、やがて氷河が後退したときにできる大きな岩が堆積したモレーンの上を歩くようになる。どんどん谷の奥へと進み、巨岩の間を縫うように歩くと、やがて奥の湖が現れた。湖の色は石灰質が溶け込んでいるのか白濁した水色をしている。すぐ先には氷河の先端があり、その上にはいく筋もの氷河を身にまとったクラサービッツァ峰がそびえ立っている。すばらしい場所だ。

 谷の斜面を登り、湖を見下ろす位置に着き、ここらへんでいいだろうと大きな岩の上に腰を下ろし、日食を待つ。左手にクラサービッツァ峰、正面に谷の反対側の尾根があり、太陽はその尾根の上あたりに位置していた。景色はこのうえなく美しいが、太陽はいつもと変わらない。これからこの太陽が隠されるなんて信じられない。わざわざこんな場所にまで来て、何も起こらなかったというのでは困るのだが、それでも、本当にこれから暗くなり、皆既日食が起こるとはとても信じられない。太陽はいつだって頭上に輝いているものなのだから。
 どこかの天文学者がきっと難しい計算をして出したのであろう皆既帯の上に確かにいるはずなのだけど、本当に計算はあっているのかと思ったりしながら、皆既日食の時間が近づくのを待つ。

 やがて、先ほどより明らかに暗くなってきていることを感じる。辺りの景色がサングラスをかけたときのように見える。「これから何かが起こる」という、ただならない予感がしてくる。肉眼で太陽を見ると明るすぎて欠けていることが分からないが、日食グラス越しに見るともう弓状になっている。そしてその弓がどんどん細くなっているのがわかる。そろそろはじまるなと思いながら眺めていたら、急に辺りが暗くなり、唐突に皆既日食が始まった。太陽が月に隠される最後の瞬間に、その一点が赤く光ったように見えた。

 そして白い環が現れた。息をのみ、目を凝らす。それはいままで決して見たことのない、異様な光景だった。太陽と月が完全に一致し黒い円となり、その周りにコロナが、白い環となり浮かび上がっていた。直視してはいけないものを直視しているのを感じ、パンドラの箱を開けてしまったような、もう取り返しのつかないことをしているのを感じる。
 しかしそれも数秒間の出来事で、次の瞬間にはコロナの上に分厚い雲が覆いかぶさり、隠されてしまう。そしてそれからはときおり薄くなった雲の向こうからしかコロナは現れない。もう一度はっきりと現れるのを祈るように待っているうちに、雲の向こうから太陽の光が差し込み、皆既日食は終わった。もう二分間が経ってしまったのかと驚く。二分間がこんなに短いと感じたことはなかった。皆既日食が終わってもしばらくは部分日食のため薄暗かったが、やがて周囲はまた元の明るさに戻り、太陽は何事もなかったかのように谷のむこう側の尾根に沈んでいった。

        *

 あの光景を見て以来、何かを「もっていかれた」気がしてならない。
 そうなる予感は十分すぎるほどあり、だからこそわざわざアルタイ山脈まで出かけたのだが、やはり、そうなってしまったようだ。
 日常の中に、一瞬だけ何かがなだれ込むような光景だった。そしてたった一回しか見ることのできない光景だった。太陽は日の出と日没を繰り返し、月は満ち欠けを繰り返す。そういう円環的なリズムの真ん中を、突如貫くように現れた光景だった。
 宇宙的な規模の出来事に居合わせたことの驚きには計り知れないものがあった。自分が卑小な存在に思えるなどという出来事ではなかった。自分が無化され、あらゆる所属から一瞬だけ解除されるような出来事だった。
 アルタイ山脈の山奥で、あの光景と出会って以来、僕は次の日食、その次の日食、これから先起こる日食のことばかり考えるようになっている。

投稿者 tsuyoshi : 00:24 | トラックバック

2008年11月24日

「Altai Eclipse」展示は今週末(30日)まで

calcutta cafeでの写真の展示がはじまり、連日多くの人と出会い、話しています。
来ていただいた方、ほんとうにありがとうございます。

カフェでの展示なので、写真を前に、お茶をしながらあれこれと話せるのがとてもいいです。
住んでる場所がカフェから近いので、僕がいないときに来られた場合、店主のじょーさんから連絡が入り、すぐに行くことができるのも、この場所で展示したことのメリットです。

このように、多くの人と立て続けに会い、話すというのは、考えてみれば、旅の途中はよくありました。
ジンバブエのハラレ、ナイロビ、ブダペスト、イスタンブール、エスファハン、ラサ、カトマンドゥ、バラナシ、ブッダガヤ等々、それぞれの街の安宿で多くの人と出会い話していました。
そしてその中でも、おそらくもっとも多くの人と出会い、話したのがカルカッタでした。
ここ阿佐ヶ谷のカルカッタカフェでも、ありがたいことに、あのときと同じような感じで、多くの人と出会い、話しています。

展示は今週末(30日)までです。

土日はずっとカフェにいる予定です。
平日に来られる方は、事前に連絡をいただければ、いつでもカフェにいるようにします。
夜の7時以降ならば、だいたい阿佐ヶ谷にいるので、直接店主のじょーさんに言って
呼びだして下さい。(平日の昼は、無理のこともあります。)
お会いできること、楽しみにしています。


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「Altai Eclipse」

8月1日にロシアのアルタイ山脈で皆既日食が見れると、夏の初めに聞いた。
皆既日食とは太陽が月に完全に隠される現象のこと。そのとき空はにわかに暗くなり、太陽の周りに普段は見ることのできないコロナが現れるのだという。僕は皆既日食を見に行くことにした。

日本から西シベリアのノボシビルスクへ飛ぶ。そこから寝台列車とバスを乗り継ぎ、小さな村でおりる。アルタイ山脈を奥へ奥へと歩く。峠を越え、高山植物が咲き乱れる草原をぬけ、氷河に削られた広い谷をさかのぼり、雪山を背にしたシャブリンスキー湖にたどり着く。8月1日午後5時半過ぎ、僕は湖を見下ろす大きな岩の上に腰かけ、皆既日食が始まるのを待った。

月と太陽の円環的なリズムを貫くように現れる白い環
それはあまねくものへと開かれた光景
扉は数分間だけ開き
そして何事もなかったかのように閉じた


 ***


「Altai Eclipse」

期間:2008年11月16日(日)〜11月30日(日)
場所:calcutta cafe
open:chai time 12:00〜15:30
Dinner time 18:00〜21:30
(15:30から18:00は閉まっているので注意)
定休日:月曜(期間中17日、24日は定休日)

土日は阿佐ヶ谷駅には中央線の快速は停まらないので注意して下さい。
カフェなので1オーダーお願いします。

紀行文はこちらです「アルタイ山脈、エクリプス紀行

投稿者 tsuyoshi : 17:24 | トラックバック

2008年11月09日

「Altai Eclipse」展示の準備をする日々

写真の展示の準備をする日々です。

今回のロシア、アルタイ山脈の写真は、おもに67判という大きなカメラで撮りました。フイルムはネガカラーフイルム。

撮った中からどれをプリントするか選び、何度も暗室に入り、自分でプリントしています。
カラー暗室は、モノクロとは違い、完全に真っ暗な中での作業になります。(モノクロの暗室は赤い光が点いている)

引伸し機にネガをセットし、カラーフィルターと露光時間の値をセットし、明かりを消し、印画紙をイーゼルに置いて、露光のボタンを押すと、真っ暗闇のなか、セットした秒数だけオレンジ色の光が印画紙に投影されます。

光が、印画紙に吸い込まれていく様子をじっと見て、露光が終わったらまた真っ暗ななか、手探りで印画紙を自動現像機の中に入れ、蓋をして、部屋の明かりを点けます。

しばらくしたら自動現像機からプリントされたものが出てきます。
それを見て、濃さや色を判断し、露光の秒数やカラーフィルターの数値を変え、またプリントするということを繰り返し、ときにどういう色に近づこうとしているのか分からなくなり、ものすごく微妙な色の間を行き来したりしながら、すこしずつ「これ」と思えるものに近づけていきます。

暗闇の中で色を探し、光を紙に焼き付けるという作業には、なにかとても夢中にさせられるものがあり、暗室に入っているときは、時間の感覚がおかしくなります。暗室に入っている間はずっと、とても深く集中し充実した時間をすごし、終わってみると、思いのほかへとへとになっています。
そうやって何度も暗室に入り、時間と労力(とお金…)をかけ、一枚一枚プリントし、自分の手で額装したものを、展示する予定です。

今回の写真の展示は、はじめの一歩です。
これからずっと、撮り続けることになるであろう日食の、一回目。
(正確には日食そのものではなく、日食に表象される「なにか」を追っているのだと思っています。)

日食が、世界に「開いていく」ような、祝祭的な出来事だとしたら、
このように写真を展示することは、ささやかな形ではあるけれど、自分がいままでやってきたことを、社会に「開いていく」ことでもあります。

そのような第一歩を、自分がいま住んでいる町で、友人たちのつながりの中から出会い、自分にとってとても大切な出来事のあった都市の名前を冠した場所で開くことができることが、嬉しいのです。

すこしずつ、でも確実に。
今いる場所から世界へと、開いていくこと。

「世界」ということばが何を指し示すのかは、そのときどきにより様々だけれど、遥かな場所からとても身近な場所までを、ゆるやかに含んでいるのだということに、このごろ自覚しつつあります。

一年ほど前、僕は「次の十年、「根」と「葉」について」という文章を書きました。
それは、三十を前にして、次の十年、「自分」が「世界」とどう関わっていきたいのかを、一本の木ありかたをヒントにして書いたものでした。今回の写真の展示は、あれから一年とすこし経ち、31歳になり、あのときは種になったと思っていたものが、ようやく一枚の葉を生やした、といった感じです。ささやかな形の展示ではあるけれど、こうやって一年前に願ったことが、具体的な形になることがとても嬉しいです。(それにどんなことだって、はじまりはささやかで小さいものなのだ)

展示は16日からです。

期間中土日はカフェにいる予定です。
平日もなるべく居ようとは思っていますが、
事前に連絡をいただければ確実です。
このように展示することは、普段なかなか会えない友人や、
まだお会いしたことのない方とお会いできる機会だとも思っています。
お会いできること、とても楽しみにしています。


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「Altai Eclipse」


8月1日にロシアのアルタイ山脈で皆既日食が見れると、夏の初めに聞いた。
皆既日食とは太陽が月に完全に隠される現象のこと。そのとき空はにわかに暗くなり、太陽の周りに普段は見ることのできないコロナが現れるのだという。僕は皆既日食を見に行くことにした。

日本から西シベリアのノボシビルスクへ飛ぶ。そこから寝台列車とバスを乗り継ぎ、小さな村でおりる。アルタイ山脈を奥へ奥へと歩く。峠を越え、高山植物が咲き乱れる草原をぬけ、氷河に削られた広い谷をさかのぼり、雪山を背にしたシャブリンスキー湖にたどり着く。8月1日午後5時半過ぎ、僕は湖を見下ろす大きな岩の上に腰かけ、皆既日食が始まるのを待った。


月と太陽の円環的なリズムを貫くように現れる白い環
それはあまねくものへと開かれた光景
扉は数分間だけ開き
そして何事もなかったかのように閉じた


 ***


「Altai Eclipse」

期間:2008年11月16日(日)〜11月30日(日)
場所:calcutta cafe
open:chai time 12:00〜15:30
Dinner time 18:00〜21:30
(15:30から18:00は閉まっているので注意)
定休日:月曜(期間中17日、24日は定休日)

ただし初日の16日のみ
chai time 12:00-15:00
Dinner 19:30-21:30。
のオープンになります。

詳しい道順はこちら
なお土日は阿佐ヶ谷駅には中央線の快速は停まらないので注意して下さい。
カフェなので1オーダーお願いします。

紀行文はこちらです「アルタイ山脈、エクリプス紀行



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2008年10月17日

「Altai Eclipse」写真展示のお知らせ

阿佐ヶ谷にあるcalcutta cafeで、今年の8月にロシアのアルタイ山脈で撮ってきた写真の展示をします。

土日はなるべくカフェにいようと思っています。
事前に連絡をいただければ、平日でも行くことができます。
カフェから徒歩数分のところに住んでいるので、
店主のじょーさんに言っていただければ直接呼びだすこともできます。
店主がひとりで切り盛りされているとてもちいさな、女の子の部屋のようなカフェで、
男が一人で入るには若干躊躇するかも知れませんが
ひるまず入って下さい。
はじめましての方、久しぶりの友人、よく会う友だち、等々、
お会いできること楽しみにしています。


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「Altai Eclipse」


10-16-2008_001web.jpg
(ロシア、アルタイ山脈、アッパーシャブリンスキー湖、皆既日食30分前の写真。まだ普段とほとんど変わらない明るさ。)


8月1日にロシアのアルタイ山脈で皆既日食が見れると、夏の初めに聞いた。
皆既日食とは太陽が月に完全に隠される現象のこと。そのとき空はにわかに暗くなり、太陽の周りに普段は見ることのできないコロナが現れるのだという。僕は皆既日食を見に行くことにした。

日本から西シベリアのノボシビルスクへ飛ぶ。そこから寝台列車とバスを乗り継ぎ、小さな村でおりる。アルタイ山脈を奥へ奥へと歩く。峠を越え、高山植物が咲き乱れる草原をぬけ、氷河に削られた広い谷をさかのぼり、雪山を背にしたシャブリンスキー湖にたどり着く。8月1日午後5時半過ぎ、僕は湖を見下ろす大きな岩の上に腰かけ、皆既日食が始まるのを待った。


月と太陽の円環的なリズムを貫くように現れる白い環
それはあまねくものへと開かれた光景
扉は数分間だけ開き
そして何事もなかったかのように閉じた


***


「Altai Eclipse」

期間:2008年11月16日(日)〜11月30日(日)
場所:calcutta cafe
open:chai time 12:00〜15:30
Dinner time 18:00〜21:30
(15:30から18:00は閉まっているので注意)
定休日:月曜(期間中17日、24日は定休日)

ただし初日の16日のみ
chai time 12:00-15:00
Dinner 19:30-21:30。
のオープンになります。

詳しい道順はこちら
なお土日は阿佐ヶ谷駅には中央線の快速は停まらないので注意して下さい。
カフェなので1オーダーお願いします。

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投稿者 tsuyoshi : 10:44 | トラックバック

2008年10月08日

日食の写真を展示します

ひょんなきっかけで阿佐ヶ谷にあるちいさなカフェの店主じょーさんに出会い、ロシアのアルタイ山脈で撮ってきた写真をカフェの壁に展示させてもらえることになりました。

場所はcalcutta cafe
期間は11月16日から11月30日(月曜は定休日)

その他詳細は決まり次第また更新します。
ぜひ来て下さい。


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投稿者 tsuyoshi : 01:06 | トラックバック

2007年11月16日

写真展とお話のおしらせ(追記あり)

11月26日まで京都造形芸術大学でちいさな写真展をしてます。
去年の5月に大阪のCASOという場所で展示した写真をも一度使ってます。あのときはナトリウムランプで色がなくなってたけど今度はちゃんとカラーです。

最終日の26日には「地球大学@京都造形芸術大学」というレクチャーシリーズの第四回として竹村先生とお話する予定です。喜望峰からの旅の話と、水源域の撮影の話などをできたらと思ってます。偶然ですがいま東京ミッドタウンで開催してる「WATER展」という展覧会のスーパーバイザーを竹村先生がされてるので、水の話などもできたらと思ってます。一般の方も全然大丈夫なので関西方面に住んでいる方はぜひ来て下さい!

(20日追記:26日に新作の水源域の写真を一枚か二枚持って行きます!)


場所:
京都造形芸術大学 人間館1F 地球回廊ブース内(アクセス

期間:
2007年11月14日(水)ー26日(月)
9:00−20:00 入場無料 日曜休館

11月26日(月)18:00ー20:00
本郷毅史 × 竹村真一先生
地球大学@京都造形芸術大学 第四回「新しい地球観」(で、でかいテーマだ…)


*コンセプト文とポスターと会場の様子を載せておきます。

本郷毅史写真展
喜望峰ー日本 「一番遠い場所をここにつなげる」


「一番遠い場所」から日本を目指して自転車で旅をする。ある日そう思い立ち、アフリカの南端喜望峰に行き、自転車を漕ぎはじめた。当初は二年で戻って来れるだろうと思っていたが、世界は思った以上に大きく、僕は予期せぬほどに旅に魅了され、結果三年五ヶ月かかった。

日本を目指して自転車を漕いでいる時、あまりにも遠い、という思いをしばしば抱かされた。しかし黙々と漕ぎ続けていたらいつしか日本に辿り着いていた。自転車で旅をするということは見知らぬ場所と場所を一本の糸でつなげていくこと。そしてそうやって「一番遠い場所」からつなげてきた糸を、最後に生まれ育った場所につなげることで、世界が、自分の身体と地続きにあるということを知ることができた。

世界は、テレビや新聞記事のむこう側にあるのではなく、自分のいる場所から「一番遠い場所」までずっと、皮膚一枚隔ててつながっているのだということ。喜望峰のような遥かな場所も、直接「ここ」につなげることができるのだということ。そういう当たり前のことを、黙々と自転車を漕ぐことで、身体に染み込ませていったのだと思う。

ここに展示している写真は、むこう側の光景ではなく、自転車に乗って見た光景。僕の目の前、皮膚一枚隔てた外側に、目も眩むような世界が展開されていた。


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